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『我がため、ウチごはん』(2) 茄子のフンゲット

コツで花開く、シンプル料理

渡辺さんの料理はとにかくシンプルだ。今回のレシピを見ていただいてもわかるが、材料も手順も驚くほど少ない。「茄子のフンゲット」なぞ、味付けは塩だけである。

「僕の料理はよく“引き算”と言われますがその逆。“足し算”の料理です。食材があって、そのおいしさを引き出すためにひとつずつ味を加えていき、OK!最高!と思ったらそこで止める。だから塩だけ加えて終わりってこともよくあります」

しかし、シンプルがゆえにごまかしがきかないため、むしろ難しい気がする。相当にポテンシャルの高い食材を使えば別かもしれないが、筆者が考えなしに塩だけで何かを作っても、さほどおいしくなる気がしない。プロの技ということか?いや、使っている塩に秘密があるのか?などと何かのせいにしたくなるが、どうもそうではない。

「テクニックでも、使う塩でもなく、大事なのはコツです。塩の分量とか、入れるタイミングとか、ちょっとしたコツがおいしさに繋がるんです。たとえば、パスタ。麺を茹でるときの塩、“おまじない”程度にしか入れないでしょう?違うんですよ。たっぷり入れて麺に塩味を入れるんです。パスタは麺が主役の料理。みなさんソースに力を入れがちですけど、ソースはあくまでもソース。麺をおいしく茹でることができれば、その料理は成功したも同然なんです(笑)」

とろける食感、「茄子のフンゲット」

さて、そろそろレシピ紹介へと移ろう。渡辺さんが考案してくれた、おうち時間を豊かにしてくれる至極のレシピ2本。

まずは「茄子のフンゲット」。「フンゲット」とはイタリア語で「キノコ」の意。茄子がキノコのように見えることから名付けられたというナポリを代表する料理だ。茄子は素揚げするのが一般的だが、渡辺イズムではこの暑い夏に“油で揚げる”なんてハードルは越えない。じっくり蒸らし炒めすることでトロッと感を生みだすお手軽バージョンだ。


材料:2人前

  • 茄子…2本
  • ニンニク…1片
  • イタリアンパセリ…適量
  • 塩…適量
  • オリーブ油…大さじ2

茄子は皮付きのまま2cm幅の輪切りにしてボウルへ。塩をふり全体になじませ、30分ほどおいてアク抜きをする。
「今回はイタリア茄子を使っているのでアク抜きをしていますが、和茄子の場合は不要。でも切ったらすぐに調理してくださいね」と、渡辺さん。 
ニンニクをみじん切りにする。
鍋にオリーブ油とニンニクを入れ、弱火にかける。
ニンニクの香りが立ってきたら、水でさっと洗った茄子、塩をふり入れてかき混ぜ、蓋をする。
焦げないように時々かき混ぜながら、弱火で蒸らし炒めにする。

お気づきかと思うが、今回のレシピのコツはここ。焦らずじっくりと、20~30分かけて茄子に火を通そう。

茄子がとろりとしたら火を止める。
塩で味を整えたら器に盛り、刻んだイタリアンパセリを散らせばできあがり。 

さっそく食べてみる。甘くジューシーな茄子の食感がなんともいえない。歯ざわりを残しながらもとろ〜りとろける食感。イタリアンパセリの爽やかな香りも夏にぴったりだ。そのままはもちろん、バゲットにのせて味わうのもいい。うん、白ワインだな。

余ってもうれしいアレンジ術

シンプルゆえにアレンジの幅が広いのも渡辺さんの料理の特徴である。先ほどまではワインのお供だった「茄子のフンゲット」はパスタを加えると、ボリュームあるごはんと化す。追加で必要なのはショートパスタと韓国唐辛子だけ。もちろん、アッという間にできる。作り方をみていこう。

塩味をほんのり感じるくらい塩を入れたお湯でショートパスタを茹でる。
茄子の鍋にショートパスタと茹で汁を少し加え、全体をなじませて器に盛る。
韓国唐辛子と刻んだイタリアンパセリを散らす。 

唐辛子が加わっただけなのにまた違った味わいになるのがオモシロイ。

『我がため、ウチごはん』(3)じゃがいもといんげん、アンチョビのサラダ へ続く