民俗学は無限大! 第2章 佐賀県武雄市「御船山楽園ホテル らかんの湯」
全国サウナーの聖地、ココにあり
今回のテーマも蒸し湯文化、サウナである。またかよ、と読み飛ばさないでいただきたい。
同じ“蒸し湯”とはいえ、前回の鎌倉時代から続く伝統スタイルとは大きく異なる、スタイリッシュな現代版である。いや、現代の先を行く最先端というべきか、新しい時代のカタチというべきか。
そこは、佐賀県武雄温泉にある「御船山楽園ホテル らかんの湯」。
あなたがサウナー(サウナ愛好家のこと)なら説明の必要もあるまい。そう、「サウナシュラン2019」から3年連続でグランプリに輝く、サウナー憧れの施設である。「サウナシュラン」とは、週2日以上サウナに通い、サウナの普及活動に殉ずる人、通称「プロサウナー」が厳選した“今行くべきサウナ”のこと。毎年11月11日の「ととのえの日」に発表されるのだが、2021年も全国5000以上あるといわれる施設の中で「御船山楽園ホテル らかんの湯」がナンバー1に輝いた。もはや無敵なのである。
光の迷宮と化す幻想のホテルロビー
どうだろう?サウナ好きならずともグッと興味が湧いてきたのではないだろうか。
なにを隠そう、筆者は乾式タイプの、いわゆるサウナが苦手である。息苦しいし、何をするでもなくただじっと座っているのも我慢がならない。そんな筆者が「大人のサウナだ!新しい癒しだ!」と、テンションが爆上がりしたのが、「御船山楽園ホテル らかんの湯」だ。
ホテルロビーからして度肝を抜かれる。そこは、暗闇に無数のランプが浮かび上がる幻想空間。鏡張りの壁に、ピカピカの床に反射して、光の海がどこまでも続いている。思わず立ちすくむとすぐ近くのランプが強い光を放ち、その隣へ、またその隣へと、次々に光が伝播していく。ここはどこ?私はだれ?な気分である。ちなみにこちら、「チームラボ」が手がけるアート作品『森の中の、呼応するランプの森とスパイラル – ワンストローク』。筆者が行ったときはオレンジの光だっただが、季節によってピンクやブルーなど色が異なり、また違った表情をみせるという。
アートのような白亜のサウナ室
夢見心地で受付を済ませ、いよいよ浴場へと向かう。お目当てのサウナは浴場内、露天スペースの一画にあるのだが、扉を開けて息をのむ。天井も壁もやわらかな曲線を描き、一面、目がくらむほど真っ白!サウナからイメージされる汗臭さなど皆無な美しい空間である。
壁にぽっこり空いた穴に体をすっぽりおさめると、これがなんとも落ち着く。室温は80度ほど。じっくり汗がにじんでくる。BGMはホテルの隣に広がる御船山の森の環境音。ライブで流しているとのことで、時折響く鳥の声が耳に心地いい。鼻腔をくすぐる香りは、アロマ水を凍らせた「キューゲル」だ。サウナ室入口に設置された冷凍庫から取り出し、サウナストーブに投入するお楽しみアイテムである。一般的な“水かけ”とは異なり、蒸気がゆっくり発生するとともに、気温も湿度もじっくり上がるため息苦しさがない。汗が吹きだしてきた。なんだかとても気持ちいいじゃないか。
10分ほど堪能したあと、サウナ室を出て水風呂へ。美肌湯と称される武雄温泉の湯を17℃まで冷ました源泉水風呂ゆえにやわらかい。一気に汗が引いていく。渦を巻いたような形をした、モザイクタイル仕立ての浴槽も個性的だ。
全身にしみじみ沁みわたる多幸感
サウナ、水風呂ときたら、お次は休憩だ。以前話を伺った著名なプロサウナーによると、休憩をなおざりにする人が多いが、脈を正常に戻すこの時間こそ大事だという。サウナ4:水風呂1:休憩5と、時間をたっぷり割くべきだともおっしゃっていた。
なにはともあれ、「御船山楽園ホテル らかんの湯」では極上の休憩タイムが待っている。広々とした内湯や露天風呂で美肌湯を楽しんだり、森を望むベンチでまどろんだり。女湯のみ、喫茶室という魅惑の空間もある。自家製プリンやデトックスウォーター、ドライフルーツなどを自由に楽しむことができる、森に臨む休憩室だ。薪ストーブが焚かれたガラス張りの空間で、見る人が見れば「ウン十万だね」という高級チェアーに裸で寝そべってみる——。
ほどなくすると、やってきた!なんだかシアワセ~♡な多幸感。これぞ、サウナの真骨頂、心身が“ととのう”極上体験である。
宿泊して楽しむもまたよし
筆者のようにサウナが苦手というあなたにこそ、体験いただきたい「御船山楽園ホテル らかんの湯」。空間も設備もサービスも、他とは一線を画す、大人のためのサウナである。ちなみに今回ご紹介した女湯と、男湯では造りや雰囲気が異なるという。朝夕で男女が入れ替わるため、ホテル宿泊者ならいずれも楽しむことができる。また、立ち寄り入浴は事前予約制であるのでご注意いただきたい。
詳細はホテル公式サイトでご確認を。